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Eto Ryosuke 著
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踊りの一連 (táncrend, tánc ciklus) [洪語.]
村の伝統的な踊りのレパートリーから構成される、決められた順序で配列された組曲風の踊りのメドレー。3~5種類の踊りから構成されるこの踊りの一連は、途中休憩を挟むことなく、30分~1時間に渡って続けられる。そしてその間、最後まで同一のパートナーと踊り、踊りの途中で他人のパートナーに申し込んだり、パートナーを交換することはない。これは、フォーム上、音楽上、機能上のいずれの観点から見ても、民俗舞踊を構成する最も大きな完結した単位と見なされる。踊りの宴の中、これはほとんど形を変えないまま数回繰り返される。

踊りがこの様に一定した順序で組曲風に組合わさるという現象は、いずれの時代のいずれの民族の舞踊文化の中においても見られるというものではない。中世ヨーロッパの特質を残すバルカン地域の舞踊文化では、規則性の強い構造を持つチェーン・ダンスが主体であり、そこでは一定した順序の一連は稀にしか形成されていない。

一方、中東ヨーロッパの諸民族の舞踊文化の場合では、開いたフォームで踊られる即興を使う近代のカップル・ダンスが主流であり、そこでは、組曲風の様式がまとまりを作り規則立てる枠組みとなっている。カルパティア盆地に住むスロヴァキア人、ハンガリー人、ルーマニア人の農民層の踊りの一連の唯一の基本骨格は、常に男性舞踊に始まり、それに続いて幾つかのテンポの異なるカップル・ダンスが踊られるというものである。

踊りの一連の萌芽を意味する、遅いテンポと速いテンポの踊りからなる、プロポルツィオの関係にある踊りの対は、中世後期に現れたものである。この方式は、ルネッサンス時代、特にバロックの時代に到って、複数の部分からなるより発展した踊りのメドレーの基礎へと変容した。そしてそれは、踊りからはもう独立した器楽組曲の発展へのきっかけともなった。

一部の地域では、今日でも庶民の間で活力をもって伝承されているこの踊りの一連は、古い時代のヨーロッパにあった組曲風の踊りの編成の方式に由来する、東ヨーロッパ固有の残留物と言うことができる。そして正にそれ故に、全世界の舞踊文化の歴史という観点からも、この伝統は重要な意味を持っているのである。

(出典:Magyar Néprajzi Lexikon)
by kislexikon-a | 2009-10-09 23:01 | ・踊りの一連
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