チェロに似た形の手製の打楽器。比較的モダンなヴァリエーションで,「カーヴァーシュ・ガルドン」と呼ばれるものは,チェロを改造したものである。普通,ウテーガルドン(あるいはガルドン)と呼ばれるものは,カエデやヤナギの木材をくり抜いてその本体を作る。付属のバチ("ütő" あるいは "gardon pálca" と呼ばれる)は,硬木から作った長さ40cm,太さがホウキの柄ほどの棒である。羊の腸で作った3本~4本の弦は,一般に,一律にD音に調音されている。この楽器には,弓を使うことは決してない。一平面上に配列された4本の弦を,頭部が水平になったコマ(bridge)の当たりで,右手に持ったバチで叩くのである。一方,左手では,親指と人指し指で一番外側の弦(弾き弦 pengető húr)を摘み上げては放すを繰り返す。各々の踊りには,各々決まったリズム型,すなわち打弦とピチカートとの特定のコンビネーションが使われる。バチを叩くことによって発生する,このウテーガルドンの鈍い大きな音に最も近いのは,チェンバルの音である。ジメシュ地方のチャーンゴー人やチーク地方のセーケイ人,あるいは,そこに住むジプシー楽士は,踊りの伴奏として,ヴァイオリンと伴にこの楽器を用いる。
(出典:Magyar Néprajzi Lexikon)