16世紀からバロック時代にかけて普及した,行進する様式のカップル・ダンス。バロック時代の組曲を構成する四つの基本舞踊のうちの一つ。記録上最初に登場するのは1550年頃のこと。かつてはアルマンドは,偶数拍子で中位のテンポの踊りであり,それに続いては,3/4拍子の速いテンポの跳躍する踊りがしばしば踊られた。アルボーによれば,宮廷舞踊としてのアルマンドは複数カップルによって踊られたという。そして,拍子数を異にする,二つあるいは複数の部分から踊りは構成されていたという。イギリスで活躍していた,ヴァージナル・ピアノ音楽やヴィオラ音楽の作曲家たちは,多くの場合,五重奏で単純化,定式化された様式でこのアルマンドを作曲した。そしてそれらの作品は,W・ブレイドや Th・シンプソンによる舞曲コレクションを通してドイツに伝搬した。ドイツにおいては,自国の舞踊音楽の伝統に則った,一般的に四重奏で演じられる舞曲ジャンルである「ダンツ」(Dantz) から,これらは本質的には区別されることはなかった。
17世紀のフランスのリュート音楽の世界では,アルマンドは,そのもともと具有していた歌曲的特徴や舞曲的性格を失うことになる。そこでのアルマンドは,しばしば拍節数の浮動する不規則な拍節の部分二つから構成されていた。しばしば神話的な題名をまとい,プレリュードの性質を持った曲目として踊りの対への導入として演奏された。
シュワーベン地方やスイスでは,今日においても踊られている 3/4拍子の踊りで,速いテンポのワルツに近い関係にある踊りの事を,アルマンドと呼んでいる。
(出典:Néptánc kislexikon)